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法人形態 の選択 (Choice of Business Entities)

Mar 28, 2016

何か特殊な理由が無い限り、ハワイで起業する場合は一般的にハワイ法人を利用します。

そこで今回は、日本企業や投資家に最も良く利用されるハワイ株式会社(Corporation)と有限責任会社(Limited Liability Company 通称「LLC」)を中心に、法人の種類について簡単に説明します。法人形態の選択で検討すべき点は、税務上の扱いや融資や投資家の存在、事業の規模などが考えられます。

株式会社
株式会社は、大きく分けてC-CorporationとS-Corporationの2種類があります。S-Corporationは税務上パススルー主体としてのメリットはありますが、株主の数や株主が個人ではならないという制限、さらに非居住者が株主になれないことから、日系企業や投資家が利用することはほとんどないため、当コラムでの説明はC-Corporationに限定します。

日本同様に、ハワイ株式会社は株主が出資者となり、出資金と引き換えに株式が発行されます。所有する株式の種類や数により、投票権や配当などの権利を設定することが可能です。株主は株主契約(Shareholder Agreement)の締結により、株主間の権利を設定することもできます。法人の運営はバイロー(Bylaws)という法人規則により支配され、その内容は法律に従っているものであれば柔軟に作成することが可能です。

株式会社は取締役(Board of Directors)により法人の経営に関する方針が定められ、日常的な業務は役員(Officer)が担当します。取締役や役員の指定方法や役割については、別コラムにてご説明します。

もし外部からの投資を求めるのであれば株式会社が最適でしょう。投資家にとって株式会社は親しみのある法人形態であり、他の法人格より運営が厳格に行われることが魅力の一つであると考えられます。さらに、普通株や優先株の発効が可能であることや法人が株主になれることが好まれる点です。

株式会社の欠点の一つは、連邦所得税(と殆どの場合州の所得税)が(1)法人と(2)株主への配当で二重に課税されてしまうことです。一般的に起業家はこの二重課税を避けるために他の法人形態を利用する場合があります。

LLC
LLCは、メンバーが出資者となり、出資金と引き換えにメンバーの権利(membership interest)を所有します。
LLCの運営は、Operating Agreement(以下「OA」とする)というメンバー間の契約書のような書面により支配され、メンバーの権利や法人の運営方法、清算方法などを細かく明記することができます。OAは株式会社のバイローより柔軟に作成が可能であり、メンバーや事業の内容に適切なものを自由に設定することができます。一般的に、小規模の事業や投資家が設立者個人である場合はLLCのほうが好ましく思われることもあります。LLCの運営は株式会社ほど厳格である必要がないため、運営にかかるコストが抑えられることも魅力の一つです。

LLCの設立時に一つ必要となる選択が、メンバー運営(Member Managed)かマネージャー運営(Manager Managed)です。課税方法や訴訟リスクの観点から、どちらの運営方法も違いはありませんが、主に起業家がどのようにビジネスを運営したいかにより判断されます。もう一つの判断材料はMember Managedの場合、メンバーの名前がハワイ州商業局の登録に記載されてしまうため、間接的に出資者の名前が公開されてしまう可能性があります。Manger Managed の場合、公開されるのはマネージャーの名前のみであるため、それを理由としてManger Managedとすることもあります。
株式会社とは違い、LLCは所得税務に関しては「パススルー主体」なので、LLCは課税主体とならず、メンバーが配分を受けた所得にのみ個人的に課税されます。日本人投資家や企業のなかには、このパススルー主体により個人的に米国で納税義務が発生してしまうことを逆に好まない方もいるので、この点については税理士や会計士とご相談されることをお勧めします。

税務上の理由を考慮し、株式会社をLLCのメンバーにすることも可能であるため、各自専門家から事業内容に適切な法人形態についてのアドバイスを受けることが長期的なメリットにつながります。

LLCの欠点の一つは、比較的新しい法人形態であるため問題が発生した場合、判例が少なく、LLCに関連する法令が裁判所にどのように解釈されるかが株式会社程明確ではないことです。さらに、規模の大きな事業や投資家からの融資が必要となった場合、資金集めには好ましくないこともあります。

パートナーシップ(Partnership)
パートナーシップは、パートナーシップ権を持つパートナーらによって経営されます。法人の運営、パトーナーの権利や関係はパートナーシップ契約(Partnership Agreement)により支配されます。以前は政務上の理由もあり利用されることもありましたが、現在はあまり一般的な法人形態ではありません。

訴訟リスク
訴訟リスク回避の観点から法人の種類に特に大きな差はありません。法人としての正式な実態を保っている限り、株式会社の場合は株主(LLCの場合はメンバー)に個人的に賠償責任が発生することはほとんどありません。株主に直接責任を追及する場合は「Piercing the Corporate Veil」(直訳すると「法人のベールを突き破る」)という法人格を否定するための法理を証明しなくてはなりません。これは極めて困難な主張であり、例えば資金の混合、実体の無い法人格が濫用され背後の株主が個人的利益のために行動している、詐欺行為などが存在しない限り成立しない訴えです。Piercing the Corporate Veilの有無に関連する判例は、主に株式会社が関連するものですが、最近ではLLCにも同様の法理が適用されています。パートナーシップは種類によってパートナー自身が個人的に責任を問われる場合があるため、現在ではあまり利用されていない理由の一つです。

最後に
起業する際、どの法人形態を利用するかは各事業内容や起業家の目的によって柔軟に決定することが可能です。例として、株式会社をLLCのメンバーに設定し、さらその株式会社をパートナーシップのパートナーにすることや、ハワイ株式会社を日本本社の子会社としてその下に複数のLLCを孫会社としてぶら下げるなど、必要に合わせて法人形態を設定することが可能です。その場合、弁護士や会計士からのアドバイスが非常にに重要となります。

注意:コラムの内容は一般情報であり法的アドバイスではないことをご了承願います。法律のアドバイスをお求めの方は個人的に弁護士とご相談ください。

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